Beyond AI Logo

人工脳組織を用いた脳機能解明 Elucidation of brain functions using cybernetic brain structures

構成メンバー

People

研究リーダー Principal Researcher
池内 与志穂 准教授 Associate Professor Yoshiho Ikeuchi
東京大学・生産技術研究所 Institute of Industrial Science, The University of Tokyo
研究者 Researchers
  • 大崎 達哉 特任助教 Project Assistant Professor Tatsuya Osaki

課題

Issue

人工知能と脳機能の解明

人工知能研究と脳科学は切っても切り離せない関係にあるといえます。現在、自動運転や新薬開発などさまざまな領域で応用されているディープラーニング(深層学習)も、人間の脳の働きをコンピューター上で模倣したニューラルネットワークという技術を基盤としていることはよく知られています。人間の脳の仕組みを模したニューラルネットワークを深層化したディープラーニングは、音声・画像・自然言語を対象とする諸問題に対し、他の機械学習の手法を凌駕する高い性能を示しました。ここ10年間、機械学習の応用分野はディープラーニングの登場によって飛躍的に広がり、今では私たちの生活の中でもAIの恩恵を享受できる様になったのです。
しかし、ニューラルネットワークは私たち人間の脳の活動のごく一部、脳神経と神経細胞の信号処理の仕組みを模倣したものにすぎず、実際の脳の機序ははるかに複雑です。未だ、コンピューターは知性をはじめとした人間の脳が持つ高度な機能を再現するには至っていません。AIの能力を飛躍的に向上させるための新たな手法、さらには、コンピューターに人間のような知性を獲得させるための方法について、今、改めて脳科学と人工知能の融合研究に注目が集まっています。人間の脳の仕組みの解明は、人工知能研究の次のブレイクスルーとなる進化の鍵として期待されているのです。

研究の内容

Contents

人工脳組織の機能化

「体の外で脳を真似た神経回路を作れたら、脳のように高度な機能を持つのでしょうか?」
この問いに答えることができれば、脳が機能するために必要な要素や条件を理解でき、新しい人工知能開発へのヒントを得られるはずです。脳を理解する神経科学の新しいアプローチとして、ヒトiPS細胞から脳の一部を真似た組織を作る技術が注目されていますが、これまでの人工脳組織は脳が働く上で重要な領域間のつながりを再現できていませんでした。また、人工脳組織は未熟なため複雑な活動を示さない点も課題です。これらの課題が解決されて神経組織に機能を持たせることができれば、脳が働く仕組みの理解が深まり、脳を超えるAIを生み出す原動力になると期待されています。さらに、神経回路の異常が精神疾患などの複雑な脳の病気をどのように引き起こすのかを調べることができるようになります。
本研究プロジェクトでは、ヒトiPS細胞から人工的に脳のような組織を作り、その人工脳に機能を持たせることを目標としています。ヒトiPS細胞を球状に集めて培養すると、自発的に脳の一部のような組織(脳オルガノイド)が発生します。本プロジェクトチームは脳内の領域間の「つながり」が脳の機能にとって重要である事に着目し、脳オルガノイドをつなぎ合わせた神経回路組織「コネクトイド」を作る独自手法を開発した実績があります。脳オルガノイドは、コネクトイドによってつなぎ合わせることで、これまでに報告されたよりも活発かつ複雑に活動し、外部刺激に応じて反応を示すことが分かっています。さらに本プロジェクトでは、外部刺激のパターンを最適化してこの組織を効率的にトレーニングするAIシステムを構築し、最終的には、神経組織が自発的に「知能」と呼びうるような高次機能を持つようにすることを目指します。

価値・期待

Expectations

本研究プロジェクトが切り開く未来の可能性

本プロジェクトは、脳の領域間のつながりが脳の活動と発達を加速させるという仮説を検証し、知能を宿すために必要な要件を探索することによって、脳の理解に挑みます。脳が働く仕組みの解明は、人工知能研究の更なる進化の鍵という意味に留まらず、ブレインマシンインターフェースへの応用や、人工脳組織をコアとして機能するバイオAIの創出、精神疾患に対する医薬品開発など、さまざまな分野の研究開発、技術発展に大きく貢献できると期待しています。