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幼児の知識獲得メカニズムを活用したAI Applying insights from human infant learning to AI

構成メンバー

People

研究リーダー Principal Researcher
辻 晶 助教 Assistant Professor Sho Tsuji
東京大学・ニューロインテリジェンス国際研究機構 International Research Center for Neurointelligence, The University of Tokyo

課題

Issue

赤ちゃんの驚くべき言語学習能力

赤ちゃんの言語学習は、既存のAIシステムの追従を許さないほどの驚くべき能力です。
AIが人と同じように言葉を操るのはとても難しいことです。その為には、膨大なデータ量と学習コストが必要ですが、人間の赤ちゃんはその成長につれて自然に言葉を話せるようになります。この驚異的な赤ちゃんの言語学習の仕組みを理解し、そのモデルを人工知能に適用することが出来れば、AIを更なるステージに発展させることが出来るはずです。このような脳科学や認知科学などからインスパイアされた古くて新しい人工知能研究アプローチは、未来のAIを担う様々な手法の源泉として改めて世界的に注目を集めていますが、赤ちゃんの言語習得をモデルにしたコンピューターの設計は、この分野でも最先端の取り組みとして注目されています。しかし、この赤ちゃんの驚異的な学習能力の複雑な機序は、今のところ十分に理解されておらず、人工的に模倣することは非常に困難です。

研究の内容

Contents

赤ちゃんの言語習得の謎

赤ちゃんはどのようにして、驚くべきスピードと効率で言語を習得しているのでしょうか? 赤ちゃんの素晴らしい学習能力には、母親をはじめとする赤ちゃんの周りの環境、すなわち社会的な環境要素が極めて重要な役割を担っていることが知られています。しかし、それら社会的環境要素が実際にどのように学習に影響を与えているのか、その複雑な仕組みはよく分かっていません。プロジェクトチームは、赤ちゃんの言語習得の仕組み、特に学習における社会的相互作用の役割を理解することで、乳幼児期の言語発達に関する理論構築を目指しています。

双方向視線追跡法(two-way gaze-contingent eye-tracking method)

本研究では、乳幼児の学習における社会的相互作用の役割を深く理解するために、双方向視線追跡法(two-way gaze-contingent eye-tracking method)に基づいた新たな実験方法を独自に確立します。この双方向視線追跡法は、被験者である赤ちゃんと大人に対し、双方の視線をそれぞれのスクリーン上で互いに追従することでインタラクションを行える実験システムです。この構成によって、二重相互作用が学習に及ぼす影響について、その複雑なダイナミクスを維持しながらも、二次元の管理可能な形態で実験・評価することが可能になりました。また、同一システムで様々な種類の学習シーケンスを評価できる点でも優れています。例えば、このシステムを使うことで、視線誘導による対話的学習と非対話的学習の比較実験を行ったり、クロスモーダルな音と物体の関連付け学習を行ったりといったように、様々な実験が実施可能です。

価値・期待

Expectations

本研究プロジェクトが切り開く未来の可能性

本研究プロジェクトにより生成された実験データは、乳幼児の言語学習における社会的相互作用のダイナミクスついて明らかにする為の手がかりとなるばかりか、エージェントベースのAIシステムの礎として、インタラクティブなシーケンスの動的特性をモデル化して理解するのに役立つことが期待されています。これによって、将来的には幼児の為の革新的な教育方法を確立したり、ビデオ通話システムのような対話型のデジタルソリューションにも応用したりすることが可能です。
また、機械学習そのものの進化という視点においても、現行の機械学習が独立した学習形態であるのに対し、ここに幼児の驚異的な言語学習に見られる対話的な学習形態、つまり社会的相互作用性から得られた知見を付与することで、インタラクティブなAIシステムの設計に新たな道を切り開く可能性があります